ビジネスマンのファッションTips

スーツのビジネスマン/サラリーマン向けファッションブログです

イージーオーダースーツはどこに行くのか?

ピックアップ記事

スポンサーリンク

こんにちはトリグラフです。今日はいつもとちょっと変わってタイトルにあるようなことについて、つらつらと考えたことを綴っていきます。ちなみに以下の記事でのオーダースーツというのは全てイージーオーダー(またはパターンオーダー)スーツのことですので、ご了承ください。

きっかけはスーツカンパニーさんが新たに始めるオーダースーツのブランド「Quality Order SHITATE」のサイトです。

何も選ばないオーダースーツ

「いく、だけ。」というコンセプトで、このブランドを展開しているスーツカンパニーさんのお店に行って、どんなシーンやサイズ感で着たいか伝えると、専任のスタイリストさんが最適な提案をしてくれる、らしいです。

顧客層の拡大に向かうオーダースーツ業界

オーダースーツをやってみようという人は

(1) スーツに興味が出てきて、オーダーをやってみようと思った人

(2) 標準体型から大きく外れた体型をしていて、オーダースーツでないとフィットしたスーツが作れない人

基本的にはこの2種類だと思っていました。しかし近年のオーダースーツ業界は、

(3) スーツにそんなに興味はないしサイズも既製品を少し直せば十分な人

にも裾野を広げようと頑張っています。個人的には(3)の人がオーダースーツに手を出す必要は全くないと思っていますが、企業が事業を拡大しようとするのは宿命ですから、これは当然です。

ただ今回のスーツカンパニーさんの「何も選ばなくても最適な提案をします」という触れ込みには、さすがに違和感を禁じ得ません。

いろんなオーダー店でかれこれ20着くらいはスーツやジャケットを作ってきた私の経験の範囲だと、オーダースーツというのは顧客がどれだけ自分の要望を具体的に伝えられるかによってスーツの出来がかなり変わるものだと思うんですよね。

だからオーダースーツというのは、顧客側にある程度の知識や、良いスーツを作りたいという気持ち、つまりそれらの源になるスーツへの興味・熱意がないと、満足なものができないと思います。

とはいえ、顧客側の興味・熱意の部分を店側で補ったりあるいは引き出したりすることもとても大切ですから、そういう工夫をすることで顧客層を拡大することは賛成なのですが(工夫が十分かどうかはまた別問題ですが)、このキャッチコピーだと顧客側にはそういうものを全く求めていないようですし、それでいてかつ最適な提案をするというのは、店員がエスパーじゃないと無理なんじゃないかな?と思うんですよ。

このコピーにつられてほとんど興味もない人がわざわざオーダーしても、同じ価格の既製品のスーツより大きな満足感が得られるとは考えにくいし、結局オーダーする時にあれやこれや悩んだりしたら「なんだオーダーってやっぱり面倒くさいじゃん」という真っ当な感想を抱くだけなんじゃないですかね。

既製品の素晴らしい品揃えを活かしてほしい

私は、スーツカンパニーさんの既製品のスーツって凄いなと思ってます。あれだけのサイズ展開があって、しかもちゃんとトレンドを抑えた色柄やデザインもあるわけで、私が標準体型だったらまずスーツカンパニーさんでお世話になると思います。

今回のQuality Order SHITATEというブランドにも、既製品の品揃えで培ったノウハウが活かされているのだと思いますが、一方でターゲットの客層は従来のスーツカンパニーさんの客層とかなり被っているはずで、ましてや同じ店舗で既製品とオーダーと平行展開するのですから、SHITATEで1着売れれば既製品の売上が1着減るでしょうから、そのあたりの戦略も個人的には気になっています。

ちなみにコナカが展開するオーダーブランドのDIFFERENCEでは、既存のブランド(スーツセレクト)との共食いを防ぐために別店舗にしているようです。

ファッションとしてのスーツと、ユニフォームとしてのスーツ

上で、スーツにそんなに興味のない人、と書きましたが、そんな人でもわざわざ何万円も出してスーツを買うのは、スーツがユニフォームとされているシーンがあるからです。仕事の他に、冠婚葬祭もあります。

本来、興味のない人にとっては、ユニフォームとして必要最低限のコストをかければよいはずのスーツなのですが、スーツ業界としてはそれでは足りないので、何とか付加価値を訴えてもう少し対価を出してもらおう、ということだと思います。

当たり前ですが、多くの日本人男性にとって、スーツはユニフォームとして存在するのであり、ファッション=趣味として嗜むものではありません。

その趣味性に訴えてプラスアルファの対価を得る、ここまでは良いと思います。

ただし今回のキャッチコピーは、顧客側にはユニフォームとしてのスーツ以上のコストをかけさせずに、既製品よりも満足のいくスーツを提供するかのような書き方であり、これが私が違和感を覚える理由です。

勿論本当に上のようなことが実現できれば素晴らしいですが…これはどちらかというとテクノロジーの進歩が可能にするかもしれませんね。ZOZOスーツのもっと成熟したものが出てくるとか。



近年のオーダースーツ業界の拡大については、いつか記事にしようかなと思っていました。

とはいえ上で書いているように、企業が業績拡大を目指すのは当然ですし、自分がメインカスタマーでもない施策にどうこういうのも野暮だなという思いもあり、これまでは基本的に静観でして、せいぜいはじめてオーダーする人向けに多少役立つかなという記事を書く程度でした。

今回、スーツカンパニーさんの「いく、だけ。」というキャッチコピーはちょっと行き過ぎだろうと感じて筆を取ったのですが、これからもオーダー業界の動向はウォッチしていきたいと思います。

また今回はスーツのことを書きましたが、よくよく考えていくとこれはスーツに限らずファッション全体の趣味性の問題と関わりがあるなと感じました。

ファッションの趣味性というのも、実は前々から一度書こうかなと考えていた題材です。ただ結論らしきものが特段あるわけでもないので書いていなかったのですが、今回の記事を踏まえて、何か書ければ良いかなと改めて感じました。ではでは。